近年、学校や教育機関でレーザーカッターを活用する事例が増えてきました。本記事は、11月29日(日)に株式会社サカワのご協力を得て、株式会社LDFとMakeblock Japan株式会社が共催したLaserboxワークショップで紹介された、小学校の授業やクラブ活動でレーザーカッターを使った実践例や、「レーザーカッターを使った教育を広めていくには?」と題して展開されたディスカッション内容、レーザーカッター体験会の様子をもとに、開催レポートとしてまとめたものです。

1. 小学校図画工作での実践例 (新宿区立富久小学校 美術教諭 岩本紅葉氏)

 岩本氏は現在、区立の小学校で図工の授業を担当されています。工夫した授業を行う中で、数々の功績も残されてきました(Microsoft認定教育イノベーター2018、第21回東京新聞教育賞受賞、2019ICT夢コンテスト文部科学大臣賞受賞、Global Teacher Prize 2020 Top50)。そのような岩本氏に、Laserboxを使用した授業内での実践例を2つ、ご紹介いただきました。

 1つ目は、図工の授業の中で、「未来の学校や町」をテーマにしたものづくりです。子どもたちが思い思いに実現したい未来像を描き、それを形にして表現する際にLaserboxが大いに活躍しました。レーザーカッターを使うことで、これまでできなかった木材やアクリルなど丈夫な素材の加工ができ、子どもたちの表現の幅が広がりました。今までは、制作した作品をモーター等で動かそうと思っても、紙では強度が弱く難しかったのが実情です。

 2つ目の実践例は、図工の授業の版画制作です。授業では、木材を使った版を作る際にLaserboxと彫刻刀を併用しました。型の大枠はLaserboxで切り取り、彫刻刀によって細かいデザインを行うことで、作業時間を短縮しながらも子どもたちの創造の時間を増やすことができました。また、Laserboxを使用することで、1枚の板から綺麗に素早く型を抜き出すことができるため、抜き出した後の板を背景として利用することもできます。

 このように、Laserboxを用いて加工すると、使用できる素材が増えるため表現の自由度が高まり、切断や加工の作業時間を短縮することで、その時間を創意工夫や表現の時間に使うことができるようにします。こういった利点を生かすことで、授業をさらに工夫してより楽しく学びのあるものへと変えていくことができる、と岩本氏は話されました。

2. 小学校工作クラブでの実践例 (学校法人森村学園 初等部 榎本昇氏)

 榎本氏は、森村学園で○○科の教員をする傍ら、工作クラブでの指導も担当されています。現在は、Apple Distinguished Educatorにも選出され、指導したプロジェクトはグローバルコンテストで受賞されています。榎本氏に、Laserboxのクラブ活動での実践例を紹介していただきました。

 工作クラブでは、まずLaserboxを使ったカットや彫刻を体験しました。自分が思い描いたアイデアをペンで描くと、それをLaserboxが形にしてくれることで、誰でも簡単に質の高い作品を作ることができました。ツールを扱うスキルに依存せずにアイデアを表現できるということはとても重要なことだと榎本氏は言います。

 初等部5年生が、世界各国の子どもたちとオンラインで繋がるとあるイベントに出場した際には、あらかじめLaserboxを使ってオリジナルのネームタグの作成も行いました。子どもたちだけで日本らしさあふれるデザイン性の高い作品を作成することができました。花柄は生徒の手書きデザイン、校章はイラストデータ、文字はデジタルデータを使用しています。文字は子どもたちが自ら提案してユニバーサルデザインフォントを使用しています。手書きの絵のデザインと、デジタルデータが融合した作品です。

 ツールを扱うスキルに依存せずアイデアを形にし、手書きイラストとデジタルデータを組み合わせたデザインを行うことができることで、Laserboxは子どもたちの探究的な学習を促進しています。

3. レーザーカッターを使った教育を広めていくには?

 日本におけるレーザーカッターを使用した教育の実践例は、学校現場ではまだ多くないのが現状です。レーザーカッターを使った教育を広めていくにはどのような課題があり、今後どのような活動をしていくべきか、平井聡一郎氏を中心に議論を行いました。

 まずは、子どもたちが社会と関わる経験をすることの重要さを広めていく必要があります。レーザーカッターを活用したものづくり学習の例として、例えば、地域の方が必要としているものを協力して作り届けるといったプロジェクトが考えられます。レーザーカッターを使えば、実用品を制作できますので、実際に必要としている方に使ってもらうことで、誰かの役に立っているという実感、つまりは自己肯定感を高める価値ある学習となります。レーザーカッターを使った学習は一見遊びのように見えることもあるかもしれませんが、そうした学習を通して社会と関わることは、自ら探究して学習する心を育てます。その過程の中で学校で必要な学習も主体的に行うようになることが期待できます。

 今後、レーザーカッターを活用したものづくり学習を広めていくには、まずは教育者がその価値を理解することが必要です。です。そして、さらに推進していくためには「巻き込み力」がとても重要です。創造を伴う学びは、実際に体験したり作品を見たりすることで、心が動いた時にその重要さを一番理解します。従って、ただその重要さを口で伝えるだけではなく、他の教員が実際に触れる機会を提供したり、作った作品を配ったりするなど、見て触れる機会を作って周りを巻き込んでいくことが重要です。また、保護者の理解を得るために、保護者に対してそうした学習を通じて子どもたちが成長した姿をみせることが一番です。

 レーザーカッターを導入の際は、金銭面も問題となります。もちろん、学校ごとの予算次第ではありますが、それに頼るだけでなく今はクラウドファンディングなどの開かれた手段も選択肢として考えると良いと思います。学校行事のバザーで製作物を販売し、初期投資に当てた例もあります。今後もこうしたイベントやコミュニティを通じて、導入にあたり生じる課題について、意見交換できる場を用意していきたいと思っています。

4. レーザーカッター体験会

 後半のレーザーカッター体験会では、岩本氏の指導のもとLaserboxを使った版画制作の体験を行いました。各参加者が手書きでデザインを行い、それを加工して作品を制作しました。参加者がテクノロジーに触れながら、Laserboxの使いやすさや安全性に驚く場面や、手書きのデザインが形になっていくことに感動する様子も見られ、実際にLaserboxを使うことで多くの気付きや発見のある有意義な時間となりました。

 Makeblockは、レーザーカッターの教育現場での活用を有意義なものとするために、今後もこうした体験会を実施してまいります。Laserboxの教育機関での利用や、体験会への参加にご興味のある方は、お問い合わせフォームよりお気軽にお問合せください。

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